来栖恭太郎は満月に嗤う

プツンと。

アリカの中の『何か』が切れる音が聞こえてくるかのようだった。

他人よりも沸点の低い彼女は、俺の発言によって完全に沸騰し、激怒し、感情のコントロールをなくす。

貴族と言えば本来優雅で、取り乱す事なく、いつ如何なる時も微笑みと余裕を保っていなければならないものなのだが。

「ゴーレム!!!!!!!」

彼女にそれは望むべくもなかった。

金切り声を上げ、傍らに立つ従順な石巨人に命ずる。

巨体に似合わず、ゴーレムの動きは俊敏且つ正確だった。

魔力を供給するアリカの魔力の量とコントロールが優れているからかもしれない。

俺の全身を完全に覆い隠すほどの、崩落を思わせるほどの拳が振り下ろされる!

「成程」

俺はその初撃を軽いステップで回避する。

「制御が上手い…流石はローゼンハイムの娘だ。破綻しているのはその性格だけという訳か」

「ああぁあぁああぁあぁぁあぁあぁっ!!」

俺の憎まれ口を遮るように大声を張り上げ、アリカは尚もゴーレムを操った。

振り下ろされた初撃の拳。

その拳が地面を抉りながら、俺に襲い掛かってくる!

横に逸れて回避しようとするものの。

「!!」

背後から風圧。

振り向くと。

「!!!!!?」

もう片方の拳が飛んでくる!

俺の身はその左右の拳によって挟撃を受ける形となった。