来栖恭太郎は満月に嗤う

彼女は次元の歪みから、何かを引きずり出そうとする。

が、せいぜい拳大の大きさの次元の歪みから見れば、その引きずり出そうとする『もの』を予測するのはあまりにも困難だった。

次元の歪み…その口が大きく広がり、裂けそうなほど拡張し、『それ』を何とか吐き出そうとする。

どこか赤子の出産を思わせるような光景。

だがそれは、世界に祝福されて生まれ出でる新たな生命などでは決してなく、言うなれば禁断の兵器。

『この世界』には存在しない、そして本来あってはならない魔道の兵器というべきものだった。

…アリカのような小柄な娘の腕力で引きずり出されたとは思えないほどの巨体。

それは見上げるほどまでに達し、その巨大さに比例して重量も相当なもののようだった。

荒々しさを想起させる岩肌。

無表情なその顔は、愚直な武人を連想させる。

主を守る為にその力を振るう寡黙な巨人。

そういう意味では、愚直な武人という表現はまさしく言い得て妙だった。