来栖恭太郎は満月に嗤う

苦痛にのた打ち回る?

俺はクレオの顔を見る。

「それはたとえば…こんな感じか?」

クレオの包帯に拘束された中、唯一自由な右の指先をパチンと鳴らした瞬間。

「うぐぁっ!」

ライガンが突然呻き声を上げる。

彼に食い千切られた筈の俺の左腕が勝手に動き出し、逆にライガンの首を締め上げ始めたのだ。

頚動脈に指先を食い込ませ、気道を押し潰さんばかりの握力で、ライガンの強靭な首を握り潰そうとする!

「ライガン!」

その信じ難い光景に狼狽するクレオ。

その隙をつき。

「生憎だったな、クレオ」

彼の包帯で雁字搦めにされている我が身が、黒い霧と化した。

ハルパスとの戦いの際に見せたのと同様の、黒煙のような姿へと変貌する。

「俺は生まれてこの方、苦戦などした事がなくてな…苦痛にのたうつなどという経験がないのだ」