歌い終えると、詩歌は泣いていた。
色んな人に綺麗な声だと
言われてきたけれど、
詩歌の涙は声が出ないからこそ、
深く心に感じられた。
「どうだった?」
詩歌は泣いたまま俺に笑顔を向けた。
そして、2人落ち着いてベンチに座る。
[奏音くんはいいね。]
「何が・・・?」
[声が出ることが。]
「そうだな。声は素晴らしいよな。
さっき聞こえていた歌声、聞いたか?」
詩歌は首を横に振った。
「李乃っていう子が歌ってたんだ。
彼女はきっと俺の運命の人だ。」
詩歌は困ったような、
哀しい顔をしていた。
[ごめんなさい。
用事を思い出したので帰ります。]
そう伝えて、走って帰って行った。
あの顔は何だったのだろうか?


