雪哉は帽子を取った杏梨を見て驚いた。


くりくりとカールしている髪。


短い髪だからヘタをするとおばさんパーマに見えてしまう。


「杏梨……これは……?」


なぜ黙ってパーマをかけたのか?


泣いている杏梨はベッドに伏せってしまった。


どうして良いのか分からなくて泣くだけだ。


雪哉はベッドに腰をかけると、すらりと伸びた指をくりくりの髪に触れた。


ビクッ


髪を触れられた杏梨の肩が跳ねた。



「杏梨、話してくれないか?どうしてパーマをかけたのか」


杏梨の心が分からない雪哉は聞いた。


「……かけたくなっただけ……でも変になっちゃって……」


伏せっているせいでくぐもった声がした。


「俺に言ってくれれば良かったのに」


自分がやればこんな事にはならなかった。


杏梨の髪をいじるのは雪哉の夢に近い。


昔は長かった髪をばっさり切ったのは杏梨本人。


自分で切ったせいで酷い有様だった。


あの時、貴美香さんは気を失うんじゃないかと思ったくらいに衝撃的だったと後で言っていた。


急いで呼ばれた俺も数十秒は驚きで動けなかった。


そしておかしくないように切ったのは俺。


杏梨はほんの少し髪が伸びても病的に切りたくなるようで、その後は俺ではなくめぐみに頼んでいた。


あの時から杏梨の髪に手を入れる事はなくなった。