8畳ほどの和室に雪哉を除いて集まっていた。


大きなテーブルの上にはたくさんの手料理が所狭しと置かれている。



「ママ、ゆきちゃんは?」


畳の上で赤ちゃん用の布団に寝かされている陸君を見る。


いつもゆきちゃん、ゆきちゃんなので聞くのが照れくさかった。



「仕事で少し遅れるって連絡があったわ 先に食べていてくださいって」



電話があったんだ……。



日曜日の今日はもちろんゆきちゃんのお店は開いている。


人気のあるヘアーサロンだから日曜日に限らずいつも忙しそうだった。



先に食事を始めていると玄関が閉まる音がした。



「わ、私 行って来ますっ」


杏梨はいそいそと立ち上がって玄関に向かった。



玄関に続く廊下に出ると雪哉がヘルメットを廊下に置く所だった。



「ゆきちゃん」


「杏梨が出迎えか うれしいよ」


雪哉に言われて杏梨ははにかんだ笑顔になる。



「遅れちゃったな これでも飛ばしてきたんだけど」


バイクに乗ってきた割には軽装で黒いTシャツにビンテージジーンズ姿。



「ゆきちゃん、そんなに飛ばしたら危ないよ?」


「ん?あぁ 分かっているよ」


雪哉が杏梨の頭をポンポンと軽く叩いた。


雪哉に触れられるのは大丈夫で杏梨はにっこり笑った。


雪哉以外の男性に触れられでもしたら金切り声を上げてしまうだろう。