「ある日、事件が起きて……彼女から笑顔が消えた 男性恐怖症になり心に深い傷を負った彼女だったけれど、彼だけは怖がらないでくれた そんな彼女を彼は心から愛おしかった 彼女が一緒に住むことになってどんなにうれしかったか」




「ゆきちゃん……」



杏梨は雪哉の胸に顔を埋めた。




今まで恐怖におびえていた心がだんだんと温かくなっていく。




「ゆきちゃん、もういい……ありがとう」

 
  
雪哉の胸から顔をあげて見つめると、自分から雪哉の唇にキスをした。




あんなに悩んでいたなんて知らなかった……。


ずっと、ゆきちゃんに支えられてきていた。




「わたし、もう大丈夫だから」



「杏梨 愛している これからどんな事があっても愛し続けるよ」



「わたしも愛してる ずっと側にいてね……」



いたわるようなキスが額に落とされる。



そして震える目蓋、頬へキスを落としながら唇へ。



「……抱いて」



呟くように言うと起き上がりパジャマのボタンを外し始めた。




「やめるんだ 今日はショックが大きかったんだ もう寝た方が良い」



杏梨の手に触れ、ボタンを外すのを止めようとした。



「ぃや、ぉ願い……」



あの男の手と唇の感触を忘れさせて欲しかった。



「杏梨……」



雪哉は杏梨のパジャマに手をかけた。