Love Step

「……杏梨?」


雪哉は限りなく優しい声で杏梨を呼んだ。



ゆきちゃん……。


雪哉の声を聞いて杏梨は緊張を解いたが、身体は言う事を聞いてはくれず顔を起こせない。



「峻……あの子に何かしたの?」


彩は弟に尋ねた。


「何もしていないよ 声をかけたら突然あんな風に……ったくなんなんだよ!」


峻は訳が分からずイラついた。


つい叫ぶとしゃがんだ杏梨が飛び上がるように驚き顔を上げた。


それを見た雪哉が峻を睨む。


緊迫感があたりを包んだ。


「雪哉……彼女は大丈夫なの?」


彩の声で緊迫感が解けた。



「彩、峻くん 悪いけど失礼するよ」


杏梨が一人で立ち上がるのを見て言った。


「ゆきちゃん……」


「杏梨、帰ろう」


雪哉は杏梨を車に連れて行った。