「ふぁーっ」



大きなあくびをしつつ、隣を見てみると雪哉はいなかった。



寝坊したっ?



慌てて時計を見ると朝の6時。



今日は土曜日、学生の杏梨にとっては起きるには早過ぎる時間だ。



ゆきちゃん、起きるの早いな。



昨日は先に眠っている所へ雪哉が帰ってきて頬にキスをされて目が覚めたんだった。



でも眠気には勝てなくて……わたし、寝ちゃったんだっけ。



杏梨はベッドの上に起き上がると「んっ!」と大きく伸びをして床に足をつけた。



寝室のドアを開けようとした時、ドアが開いた。



「あぁ 起きていたんだね?おはよう」



相変わらず爽やかな笑顔で言われると、寝ぼけ眼の自分がとても恥ずかしくなる。



「おはよう、ゆきちゃん 早いね?撮影でもあるの?」



すっかり着替え終わっている雪哉を見て言う。



時々、ドラマや映画の撮影に協力して時間が不規則になる事がある。



「いや 仕事はないよ 今日と明日で休みを取ったんだ」



「?」



「杏梨、短いけれど旅行に行こう」



雪哉の提案に杏梨の目が真ん丸くなる。



思いがけない言葉に目が輝く。



「本当?本当に本当!?」



嬉しくなって雪哉にガシッと抱きつく。



「もう飛行機のチケットも取ったから早く仕度をして?」



「飛行機?」



「そう、9時の飛行機だから早くね?」



「は、はいっ!」



急かされて杏梨は浴室へ飛び込んだ。




飛行機って……どこに行くんだろう……?


2日間しかお休みがないのに。




急いでシャワーを浴びながら行く場所を聞くのを忘れた事に気づいた。



まあいいかっ♪ゆきちゃんと旅行だもんね♪




仕度が終わった杏梨は雪哉の車で羽田空港に向かった。