Love Step

男2人がウィスキーのグラスを傾けていた。



ソファーに座らずに直に床に腰を下ろし片膝を立てている雪哉に、あぐらをかいて座っている父親。




貴美香は雪哉の寝室に、杏梨は自分の部屋で眠っている。



雪哉はソファーで眠るつもりだ。



「意外と早い決断だったな?」



春樹がそう言って笑う。



「決断は前から出来ていましたよ タイミングが悪かっただけで」



濃いウィスキーを口にするとカッと焼けるような熱が喉を通る。



春樹が作ったものだが、自分のはごく薄い色をしている。



「杏梨ちゃんが変わっていたから驚いたよ」



春樹の言葉に雪哉は思い出したように笑った。



以前、彩のように女らしくなろうと自分でパーマをかけた時の事を思い出したのだ。




あの頃から少しずつ、杏梨は変わっていったんだ。




「お前も落ち着いたな」




数年前から比べると今の息子の雰囲気は柔らかく幸せそうだ。



「大事な娘を泣かせるなよ?」



春樹が突然真面目な顔をして言う。



「嫁がせる父親の気分?」



少し照れた雪哉は言葉を茶化した。



「小さい頃からずっと見ていたんだぞ?可愛くて仕方ないよ 杏梨ちゃんを泣かせたら容赦しないからな」



甘い父親に変身している。



本当の娘のゆずるよりも気にかけているようだ。