ゆきちゃんに分からないようにすぐに離れなきゃ。


震えている事がばれれば心配をかけてしまう。



ゆきちゃんの胸に付けていた顔を起こすとわたしは静かに離れた。


「あ、ありがとう もう大丈夫だから」


杏梨は今の状態を悟られない様に部屋を出て行った。



杏梨が突然よそよそしくなったのは分かった。


俺のせいだ。


目を赤くした杏梨が可愛くて抱きしめてしまった。


寄りかかってくれた杏梨を抱く手につい力が入った。


いつになったら君は逃げなくなるのだろうか……。


雪哉はいつまでも待つつもりだった。


杏梨の恐怖が消えるまで兄として見守るつもりだ。


だが、一緒に住むようになって杏梨を自分のものにしたいという欲望は日に日に増している。


自分の気持ちを抑えなければいけない。


このままでは君を傷つけてしまう……。