Love Step

峻が出て行き、病室のドアが静かに閉まった。


雪哉は伏せて肩を震わせている彩を見て小さなため息を吐いた。


「彩、少し眠った方がいい」


そう言ってから雪哉は近くのイスに座った。



必要以上に彩に触れるつもりはない。



突然、彩が乱暴に身体を起こした。


「いたっ!」


動いた拍子に点滴の管が引っ張られて針が抜けてしまった。


「大丈夫か?」


痛がる彩を気遣いながら、雪哉はナースコールのボタンを押した。




* * * * * *



峻は雪哉に言われたとおり、杏梨の荷物を取りに雪哉のヘアサロンへ行った。


受付でもらえるものと思っていた峻だが、受付では「雪哉さんから電話をもらっていない」と言う。


だから杏梨のバッグは渡せないと。


「困ったな……」



雪哉さんに連絡をしてもつながらないだろう。

真緒さんに電話して杏梨から渡すように言ってもらおうか。



そんな事を考えていると、峻も良く知っているめぐみがやって来た。


「峻君!待たせちゃったかしら?今、雪哉さんから電話をもらって」


茶色の合皮素材のバッグを手にしている。


「はい 杏梨ちゃんのよ」


めぐみがバッグを差し出す。