Love Step

「でも、杏梨ちゃんから話を聞いたって言う記者と電話で話をしたのよ?……そうしたら被害者の女子高校生だって……」


彩は悲痛な面持ちで言う。


「わたし言っていませんっ」


杏梨は不安げな瞳を雪哉に向けた。


「彩、杏梨 落ち着いて 何か誤解があるようだ」


「雪哉さんっ!じゃあ、なぜ記者は彼女が言ったって言うの?」



記者がわたしが話したと言っている……。


強く否定したいのに、杏梨にはもう何がなんだか分からなくなってきていた。



あの具合が悪くなった日に何があったの?



「……ゆきちゃん……わたし……わからないの 言っていないと思うけど……これが……」


杏梨は震える手で名刺を見せた。


「名刺?」


「わたしのバッグに入っていたの……」



月光ジャーナル編集部  浜田 晴美



「なぜこれを持っているんだい?」


「わからない……昨日、本屋さんでお財布を出した時に気づいて……」


彩は杏梨の言葉を聞いて不思議に思った。



この子は晴美に会った事を忘れている。

なぜ?

でもこれはチャンスだわ。



「やっぱりあなたが言ったのね!?酷いわ!」


彩は叫ぶとグラッと身体が揺れた。


「彩!」


倒れかけた身体を雪哉が支える。


雪哉の腕の中で彩は意識を失っていた。