「ゆきちゃん、ごめんね 気づかなかった」


助手席のドアを開けて入るなり謝る。


「杏梨、風邪でも引いたか?」


「ううん ちょっと考え事していたから それより、ゆきちゃん ちゃんと眠った?」


「もちろん 杏梨を送ってからぐっすり眠ったよ」


微笑を浮かべる雪哉に杏梨は頷くと助手席の背にもたれた。



「店に寄っても良いかな?」


マンションに向かっている途中、何かを思い出したように雪哉が聞く。


「うん 良いよ」


杏梨は窓の外を見ながら言った。


「雨、小降りになったね 明日は大丈夫そう」


2日間も迷惑かけられない。


「ああ でも振っていたらちゃんと送っていくからな?」


「ありがとう ゆきちゃん」




店の駐車場に着いた。


「わたしここで待っているね」


店には綺麗な女の人たちがたくさんいて杏梨は居心地が悪いのだ。


雪哉と一緒に店に入れば注目されてしまうのも嫌だ。


「わかった すぐに戻るよ」


雪哉は車を降りると傘もささずに足早に店の中へ入って行った。