Love Step

「さっき、店を出てから声をかけられていただろう?」


「……わ……からな……い」


店を出てからの記憶がすっぽり抜け落ちていた。


「具合が悪すぎて記憶が無くなった?」


眉間に皺を寄せて考え込んでしまった杏梨に雪哉は今の話を笑い飛ばそうとした。


「……誰と……会ってたのかな……」


ゆきちゃんが見たというのならそうなのだろう。


記憶がすっぽり抜け落ちてしまった事に、杏梨の心に不安が広がった。


「きっと、勧誘だったんだろう 気にしなくていいよ もう寝た方がいい おやすみ」


唇に軽いキスを落とすと杏梨は目を閉じた。


ものの数分で、杏梨の小さな寝息が聞こえてきた。


雪哉は愛らしい寝顔を見つめながら先ほどの会話を思い出していた。



本当に杏梨は覚えていないのだろうか。


そんな事がありえるのか?


それとも女性に会った事を知られたくない?


いや、嘘を吐いているようには見えなかった。


本当に具合が悪すぎて記憶が抜けてしまったんだろう。