Love Step

「ど、どんな噂?」


「本当に知りたいのかよ?」


「う、うん……」


本当は聞きたくなかった。

だけどゆきちゃんの事ならば何でも知っていたい。



怖いもの見たさとでも言うのだろうか、杏梨はコクッと頭を振った。


「女優の浅川 美咲って知っているだろう?」


峻は身を乗り出して周りに聞こえないように小声になる。


「うん……知ってる」


女医役とか検事役の出来る女がはまり役のナイスバディの女優さん。



「彼女と雪哉さん、付き合っていたらしいぜ?」



「うそっ!」


杏梨の瞳が陰る。


今にも泣きそうな顔になった。


「本当だよ 彼女、雪哉さんの顧客だし 食事をしている所も何度も見ている」


杏梨のショックが予想以上だった事に峻は驚いたが続けた。


「すでに彼女とは別れているって姉貴が言ってたよ その後釜を姉貴は狙っている」


杏梨が大きくかぶりを振った。


ゆきちゃんはわたしの事が好きなのっ!


大声で叫びたかった。


その代わりに違う言葉が出ていた。


「ゆきちゃんは芸能人のお客様なんていっぱいいるもん!それに食事くらいするのは当たり前だよっ!」


興奮気味に言い、杏梨は立ち上がっていた。


あんなにきれいな人がゆきちゃんの恋人だった……?


自分とは雲泥の差があるほどの真逆の女性。