Ｌｏｖｅ Ｓｔｅｐ

「直球だな　杏梨は」


杏梨の言葉に一瞬面食らったがすぐに笑う。



「だって出会いは最悪だったし、峻くんはもてそうだから好きって言う可愛い女の子はいっぱいいるでしょ？」


オープンカフェのテーブルに何組かの女の子たちが座っているけど、ひそひそとこちらを見て何かを話している雰囲気。


峻くんがテーブルに座る前から注目を浴びているように思えた。



みんな、峻くんを見ている。

ゆきちゃんといる時も同じ状態だから無視する事は簡単だけど、彼と一緒にいるのは初めてだから気になってしまう。


「確かに出会いは最悪だったけど、それが返ってお前の事気になり始めたんだよ」


杏梨の手に自分の手を伸ばそうとした時、ウェイトレスがアイスコーヒーとアイスココアを持って来た。


杏梨の目の前に生クリームがたっぷりのったアイスココアが置かれた。


「溶けちゃうから食べろよ」


杏梨の手を握れなかった手は長いスプーンを杏梨の手に持たせた。



はぁ～　こいつの事となると調子が狂うな……。


ウェイトレスが来る前まで杏梨の手を握り、甘い言葉を囁こうとしていたのだ。


「いただきます」


「俺といると楽しいだろ？付き合おうぜ？」


「ダメだよ　わたしはゆきちゃんが好きなんだから」


きっぱり言い切ると峻が鼻で笑う。


「お前な～　どんだけの女が雪哉さんを狙っているのか知らないのか？」


「えっ？」


長スプーンで生クリームをすくう手が止まる。


「……峻くんは知っているの？」


心なしか声が震える。


「雪哉さんの噂はいっぱい耳に入ってくるよ」



主に姉貴からだけど、この業界にいると噂話は否が応でも耳に入ってくる。