杏梨と雪哉は2人を見送る為に空港へ来ていた。



「ママ、いってらっしゃい」


さすがに長い別れになる杏梨は涙を浮かべていた。


それは母、貴美香も同じだ。


夫が亡くなってから13年間女手一つで育てたのだ。


別れは寂しすぎる。



「夏休みに遊びに来るのよ?」


「うん 春樹おじさん、ママの事よろしくお願いします」


春樹おじさんは英語に堪能だけどママはまるっきりだから。



「ああ 杏梨ちゃん 夏休みに待っているよ 雪哉と一緒に来るといい」


ママは瞳を潤ませ私を抱きしめると、ゲートへ入って行った。



「杏梨」


目の前に真っ白なハンカチが差し出された。


「え……」


「いつでも会えるんだから 泣かないで」


ハンカチを受け取らない杏梨に雪哉が流れる涙を拭いた。


拭かれて自分が泣いている事に気づいた。


「もう……寂しくなっちゃった……」


泣いている事を自覚してしまうと涙は止まらなくなった。



「杏梨……」


子供をあやすかのようにゆきちゃんにそっと抱きしめられた。


30センチの身長さで杏梨の頭は雪哉の胸の辺りまでしかない。


「大丈夫、一緒にいるよ」


いつも優しいゆきちゃん。


その優しさは妹してだと……分かっている。


「ありがとう……ゆきちゃん」