どちらのベッドで眠るかが問題。

ゆきちゃんのベッドでは緊張しちゃうし、わたしのベッドでは狭すぎる。

困っているとゆきちゃんはわたしが慣れたベッドの方が良いだろうと言ってくれた。



お風呂から上がると真っ直ぐリビングへ向かう。


リビングから話し声が聞こえたからだ。


杏梨は髪の毛をタオルで拭きながらリビングへ行くと雪哉は電話中だった。


ソファーの肘あてに腰を下ろして話をするゆきちゃんは絵のように様になっている。


キッチンに入って水を飲んでいると電話が終わったようだ。


顔を覗かせるとゆきちゃんは渋い顔をしている。


「どうかしたの……?」


「杏梨、悪い 大至急やらなくてはならない事が出来た 先に休んでいてくれないか?」


杏梨にすまなそうな顔を向ける。


「うん 分かった」


杏梨の返事を聞くと頭をポンポンと優しく叩き自分の部屋へと行ってしまった。


もうっ!

すごくドキドキしていたのにっ……。


さっきは一緒に眠ることに戸惑っていたけど今は残念な気持ちが大きくなっていた。


だけどベッドに横になるとホッと安堵する気持ちもある。


ゆきちゃんの腕の中で眠るなんて……そんなこと出来ないよ。

もう寝ようっ!

……今度のお休みにはどこかへ出かけたいな。



2時間後、仕事を終わらせた雪哉は杏梨の部屋をそっと開けた。


雪哉の思っていた通り杏梨はぐっすり眠っていた。


あどけない寝顔にフッと笑みを漏らす。


俺が来なくて安心して眠ったのか?

それともがっかりしたのか?


雪哉は杏梨の横に静かに身体を滑らせた。


狭いシングルベッドだが杏梨を抱きしめながら眠ることに嬉しさを感じていた。


ぐっすり眠っている杏梨は頭の下に腕を差し入れられても目を覚まさなかった。