「あんで石動があの中身知ってるのよ?」


そう言ったのは沙織だ。椅子の向きを変えずに壁を背もたれにし椅子の背を肘当てにしてオレを見る


「高橋先輩が来てただろ?あの時に聞いたんだ」


「へぇ~。私はてっきりゲームか漫画の話でもしてるんだと思った」


は?ゲーム?漫画?あの話のどこからそんな単語に結びつくんだ?


「違うの?石動に理解できて私に理解できない話はそのくらいだと思ったんだけど」


反論したいが、確かにそれくらいしかない気もする


あの話はオレにも沙織にも理解出来ない話だし


何はともあれ高橋先輩の話は思い出すのも苦痛なオレは話題を変える


「それと高橋先輩が1時間目の体育を自習にしてあの試作品使って模擬戦をしたいって言ってたぞ?」


楽しそうな内容だし、勝負事の好きそうな沙織は喜ぶと思ったが、乗り気でない顔だ


「あれ?喜ぶと思ったのに」と素直な感想を言ったら睨まれた


なんで?オレ何か怒らすようなこと言ったか?

 
本気でわからず、戸惑ったオレの顔を見て、深い呆れのまじったため息を一つ


「着替えがないのよ。それに赤く汚れるのは嫌」


「それなら心配ないと思うぞ?


試作品のはただの水らしいし、着替えって言ったって体育着なら今日はもう使わないから濡れても問題ないだろ」

 
「本気で言ってるの?」


声は静かでともすれば優しくさえ聞こえるが、なんで殺気を伴った視線にさらされてるんだオレは?


「忘れてたわ。あんたって本当にどうしようもないくらい察しが悪いの。」


諦観しているようなもの物言いだが、察しが悪いって程でもない。


確かに良くはないが悪くもないはずだ


「体育着って白なのよ。女子はみんな不参加」