「はん。どっちがいい?演じてやるよ」


千景の目はらんらんと輝き、その言葉に嘘がないってことは見て取れる


「遠慮します」


「からかいがいがねぇ。


当分変更するなって言っとけ。後オレは今から進学科用の問題作るから」


そこで言葉をいったん切り、目をつぶってゆっくり息を吐いた


「出て行ってくれると嬉しいかな?」


にっこりと邪気が全くない少女のような笑みを浮べ、声のトーンも心なしか上がる


まるで10代の少女のように見える


「わかりました。ではまた」


静は顔色も変わってなければ、表情も変わっていない


態度にも焦りの色もなく、挙動も落ち着いている


つまりは無反応。


「だからてめぇはつまんねぇんだって。もう少しリアクションしろよ」


その声はいつも生徒会長を相手にする時の粗野で無骨な男の太い声


ただ、うんざりした様子が声の端々からうかがえる。


静はその声にかすかに笑いを残して数研から出く


「あ、待て思い出した。雛森は元気か?」


「今日はあってません。では」


足を止めることもなく立ち去る静


「わかりやすいな。あいつの嘘は」


伸びをして立ち上がり、静の置いていった缶コーヒーを自分の机に置き直す


「手渡ししろっての。気が利かねぇ」


グッとコーヒーを飲み、またパソコンを打ち始める