廊下に白衣を着た華がいた


竹刀の切っ先を真っ直ぐ生徒会長に向ける


「真剣勝負をお願いしたい」


凛とした声は冴え冴えとしていて清流を思わせた


「雛森くぅん。なんの冗談ですかぁ?会長さんはぁ~雛森くぅんとはしませんよぉ~」


何も言わず、目を見て引かない華の態度に会長の態度が変わった


「貴方とやると手加減ができないと言っている」


それに気圧された華が思わず一歩引いてしまう


「それに私のは貴方のと違う。オレは貴方を壊したくない」


何もしてないのに汗で髪が肌にべた付き、顔がひきつる


「誇っていい。腰を抜かさぬのは大したものだし、竹刀をおろさぬ気迫もなかなかだ」


竹刀が重い。何千何万も振ってきたものなのに。これほど重く感じたのは大杉先輩と戦って以来



竹刀をおろさないのもこれが二度目だからだ。初めての時は竹刀を落として笑われた


「私は、私は」


その声に会長は静かに耳を清ませる


華は目に涙をため、今にもこぼれ落ちそうである


「副会長として、会長を支えることはできない。私より貴方の方が優秀だ。だから私ができることを。はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


渾身の突きはあっけなくかわされ


華は気付いたら大の字で廊下に寝ていた


「あいつ・・・・・・・・・・・・・・・・藤木を倒そうとしても雛森では無理だ」


その声の方向に目を向けたいが、今体がうまく動かない


「同じ剣でもあっちは人を殺す剣術。雛森のはスポーツの域だ。藤木を心配するなら違うことで示せ。


女の子が竹刀片手に突っ込んでも色気も何もあったもんじゃないからな」


一様手加減されたらしい


それを確認できればいい


少し寒いだろうがこれで頭も冷えるだろ


「考え方は間違ってない。あの狂気を止めるには誰かが倒さなきゃいけないが、それは雛森の役目ではない。


適材適所。それはどっかのバカだやってくれるから。雛森は雛森のできることをしな」


そういって頭を撫でてやり、後にする。決めた道を歩めない無念はわかるから


一人にしてやりたかった