おそるおそる振り返れば最悪の予想通り


オレの手を握るエリサ


「えっと。これはその何かな?」


「えぇ、今のこの雰囲気は私が望むものではありません」


そうですか。で、それとこれは何の関係が?


と聞ければ楽なのだが、尋常ではない殺気が"それ以上口を開いたら殺す"という無言のプレッシャーになり話せない


しかし、そこは姫たるものの由縁か?はたまた顔に出てたか?それとも話す予定だったのか?


何はともあれ伝わったらしいからいい


オレをこのプレッシャーから解放してくれるならなおいい



「それならば雰囲気を作ってしまおうと思ったのです。

スポーツ科と特別科が積極的に交流をすれば自ずと雰囲気はいいものに変わるはずです。


スポーツ科の皆様はいい人ばかりですもの」


輝かんばかりの笑顔で言うエリサ


理由は立派。そして結果として見れば確かに雰囲気は変わった。


さっきより殺伐としている


この笑顔を見た男どもの熱気はヒートアップ


中立で頼りにしていいばずの女たちも男子が色めき立つのが許せないらしく、ヒートアップ


オレの手に負えない


しかし、男どもが思っていることを察するくらいはできる


「なんでオレなんですか?」


唯一、今この瞬間に言える言葉


拒絶したら特別科が黙っていないだろう。


了承したら男子が黙っていないだろう


優柔不断に黙れば、周り全員敵に回るだろう


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんて名前の地獄なんだろここ


「貴方様はさっきの諍いを収めた功労者です。


功労者に褒美を与えるのは昔から貴婦人の役目と相場は決まっていましょう。リエッタ家の娘として恥知らずなことはできません。


だから貴方様に褒章を与えようと思ったのです。


私の手を取り、この場限りのパートナーとなることの栄誉を貴方様に与えましょう」