せーしゅん。【短編集Ⅲ】



「でもケンカしたばっかだよ??」


「平気」



キヤが大きくドアを開けて


飛び出すとばったりお父さんと出くわしてしまった。



声を上げようとしたキヤの口を

お父さんが素早く手でふさいだ。



と、同時に黒い長方形のケースが音を立てて落ちる。



その音を聞いてお母さんがこちらに飛び出してきた。




「またバンドなんかに行こうとして!!」


お母さんがお父さんに罵声を上げる。



お父さんは叱られた子どものようにしゅんっとした顔をする。



お母さんは呆れたように溜め息をし


リビングへ戻っていく。




僕たちはお父さんを見た。