せーしゅん。【短編集Ⅲ】




「ドキドキする?」


ゆかちゃんはじっと僕の目を見つめた。


僕は小さくかぶりを横に振る。



「“恋”をすると

ドキドキするんだよ」



ゆかちゃんはつまんなそうに手を離した。




ドキドキする…



好きな人といると


ドキドキする…




じゃあ

キヤもゆかちゃんといると


ドキドキするの?




後ろを振り向くと


サッカーボールを手にしたキヤがいた。



「キヤ…」


キヤはすぐに仲間と一緒に校内へ戻っていく。



「私たちも教室に戻ろう」



ゆかちゃんは僕の手を引っ張る。



ゆかちゃんの引っ張る手が


キヤだったら…


ドキドキするのかな?




“お花”みたいな気持ちになるのかな…?





……僕は


ゆかちゃんの手のぬくもりを感じて


いいのかな……?