「ゆかちゃん」
僕は小声でゆかちゃんにお願いした。
「“恋”のこと、教えて」
するとゆかちゃんは
くしゃみでもするようにクスッと笑った。
「いいよ」
これで僕も“恋”という
『青春』を知ることができる…。
―昼休み。
キヤとその周りの男子たちは
校庭でサッカーをしている頃
僕とゆかちゃんは中庭にいた。
「ヒイくんは好きな人いるの?」
まばらなタイルに一歩ずつ飛び移りながら
ゆかちゃんは聞いた。
僕も同じ動作でついていく。
「いないよ」
「…そっか」
ゆかちゃんはタイルではなく
花壇の縁に移り
僕と向かい合った。
「“恋”はお花みたいなんだよ」
と、目を花壇に咲く
彩られた花たちを見つめた。
「色鮮やかに咲いて
だけど水をあげないと
萎れちゃうの」
僕はうーんっと首を傾げる。
「よくわかんないよー」
「じゃあ」
ギュッと僕の手をつかんだ。



