せーしゅん。【短編集Ⅲ】




「ゆかちゃん」



僕は小声でゆかちゃんにお願いした。



「“恋”のこと、教えて」



するとゆかちゃんは


くしゃみでもするようにクスッと笑った。



「いいよ」




これで僕も“恋”という



『青春』を知ることができる…。








―昼休み。



キヤとその周りの男子たちは


校庭でサッカーをしている頃



僕とゆかちゃんは中庭にいた。




「ヒイくんは好きな人いるの?」


まばらなタイルに一歩ずつ飛び移りながら

ゆかちゃんは聞いた。



僕も同じ動作でついていく。




「いないよ」



「…そっか」



ゆかちゃんはタイルではなく


花壇の縁に移り


僕と向かい合った。




「“恋”はお花みたいなんだよ」



と、目を花壇に咲く


彩られた花たちを見つめた。



「色鮮やかに咲いて


だけど水をあげないと


萎れちゃうの」




僕はうーんっと首を傾げる。



「よくわかんないよー」


「じゃあ」



ギュッと僕の手をつかんだ。