「小夏(コナツ)っ!」

「朔(サク)っ」



そう言って、一年前のバレンタインの次の日、めでたく隆宮 朔(タカミヤ)と付き合うことになった小夏はととと、と可愛らしく朔に駆け寄る。


「用意出来たか?」

「うん! ちょっと待ってて」


教室の入り口から、そんな会話が聞こえてくる。


あたしはこちらに来る足音に、外にやってた目線を小夏に移す。


「あ、あのね?
朔が一緒に帰ろうって……それで、その…」


先に約束をしていたのに、それを破ってしまったことをまだ気にしてるのか
小夏は言葉を詰まらせる。


「はいはい、もー分かったから。
ほんとに……愛されてんねぇ」


あたしのからかうような冷やかしに、ほんのり頬を赤らめて「あ、明里(アカリ)!」と言う。


小夏が隆宮と付き合うことになって1年。

その1年ずっとからかい続けて、それでも未だ素直に照れるこの子には慣れるというものがないのだろうか。