「なぁ、藤井?」



先生はもたれ掛かっていた壁から離れて、机を挟んだ向かいの椅子に座った。



「な、何?」


「大学に行く気ない?」


「はい?」



私は先生を見た。



「お前の成績ならレベルの高い大学を狙えると思うんだけどなぁ……。1年浪人して、大学受験したらどうだ?親御さんも三者面談の時に大学に行ってもらいたいって言ってただろ?」


「大学には行かない……」


「何で?」


「だって、大学に行ってもやりたい事がないんだもん。そんなんで行ったって楽しくないし、お金が勿体ないだけ。それだったら就職して早く自立した方がいいし……」



親からは“大学だけは行っといた方がいい”と言われた。


けど、大学に行ったからって、別にやりたい事もないし、勉強したいこともない。


だから私は就職を選んだ。