「狭いけど、どうぞ?」



そう言って入れてくれた先生の部屋は本当に狭かった。


1Kの縦長の間取り。


玄関を入ってすぐ小さいキッチンがあって、振り向けばすぐにバスとトイレがある。
奥に8畳ほどの部屋があるだけ。



「せまっ……」



思わず口から出た言葉。



「だから狭いって言っただろ?」



そう言ってクスクス笑う先生。


キッチンには食べた後の食器があって、部屋の中は散らかってる。


ベッドの上には脱ぎっぱなしのパジャマがあって、テーブルの上にはビールや酎ハイの空き缶が散乱してる。



「汚い……」


「しょうがないだろ?男の1人暮らしなんだから……」



先生はそう言いながら空き缶を集めていく。



「先生?掃除してくれる人、いないの?」


「いたらこんなに散らかってねぇし、ここに引っ越して来てからは女の子で家に上げたのは藤井が初めてだし」


「そっか……」



先生に彼女がいないことがわかって安心した。



「適当に座ってて?」


「うん……」



私はグレーのラグの上に座った。



「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」


「紅茶」


「わかった」



先生はそう言って、空き缶を抱えて部屋を出た。