「ねぇ、お母さん?」
『ん?』
「私、卒業したらそっちに行こうかな……」
『お母さんたちは璃子が来てくれたら嬉しいけど……でも、あれだけ嫌がってたのに急にどうしたの?』
「就職先がなかなか決まらないしさ……。そっちに行って英語の勉強しようかなって……」
でも、本当はね……。
先生にフラれて、日本にいる意味がなくなっちゃったの……。
『そう……。だったら卒業式が終わったらいらっしゃい。お母さん、璃子の卒業式には帰るから、終わったら一緒に行こう』
「うん……」
その時……。
“ピンポーン”
玄関の呼び鈴が鳴った。
「あっ!誰か来たみたい。また電話するね」
『うん。体に気をつけてね』
「わかった。またね」
電話を切った。
「は~い!」
私は玄関に向かって返事をすると、手の甲で涙を拭ってリビングを出た。



