「…………い!……おーい!藤井?着いたぞ!」


「んっ……」



体の揺れで目が覚めた。


私、ホントに寝てたんだ。


車の座席を起こす。


助手席の窓から外を見る。


見慣れたマンションの前。


私が住んでるマンション。


これが先生の答え。


ほんの少しの希望が崩れた。


何も言わず、ただ前を真っ直ぐ見ている先生。



「あ、ありがとう!じゃーね、先生。また卒業式にね!」



私はワザと明るくそう言った。


先生は何も言わない。


私はシートベルトを外して、車のドアを開けて車を降りた。


先生に背を向けて、先生の顔を見なかった。


いや、見れなかった。


“バンッーー”


静寂の中に、車のドアを閉める音が響く。


私は1度も先生の車の方を振り向くことなくマンションの中に入って行った。