私は先生に背を向けて、進路指導室のドアに手をかけた。
「藤井?」
ドアを開けようとした時、先生に声をかけられた。
“ビクン”と肩が揺れる。
振り向く事も出来ず、ドアに手をかけたままの状態の私。
「送って行くよ……」
「えっ………い、いいよ……」
私はドアに手をかけたままの状態で頭を左右に振った。
「職員玄関の前で待ってろ。玄関の前に車を回すから……」
「い、いいって!傘を貸してもらえたら電車で帰るから!」
私は振り向いてそう言った。
「いいから、先生の言うこと聞け。なっ?」
先生はそう言って、椅子から立ち上がると笑顔を見せた。
そして、隣の職員室に通じるドアから出て行った。



