私の兄は、アイドルです。

 



けど……


感じたかったんだ。

音遠の香りを。


音遠が元気で過ごしているっていう、

安心感を。





──久しぶりに感じる、
自分の城は。


普段と変わらず、暖かい。



キョロキョロと辺りを軽く見渡す。



綺麗に掃除されたリビング。


窓やテーブルはピカピカで、絨毯にはゴミ1つ落ちてない。


音遠が毎日
しっかり掃除してくれてるみたいだ。



ソファには、音遠が好きなキャラクターのクッション。


俺が帰っていない間、

そのクッションを脇に抱えTVを見てたんだろうか?



TV台には、音遠、俺、母さんで撮った写真が飾ってあって。


この写真……

確か、俺のデビューが決まった時に撮ったやつだな……


少し、懐かしく感じた。




このリビングにいればいるほど


音遠が毎日この場所で
生活してるという空気が

ヒシヒシと伝わってきて、

何だか凄く安心する。



良かった……





そうして、リハーサルに戻ろうと踵(きびす)を返そうとしたその時。



「あ……」



キッチンの違和感に、
気が付いた。



ゆっくりとキッチンのテーブルに向かって歩いていき。


ジッと、それを見つめた。