ボーっとしてる俺の目の前で、
渡さんは笑顔で話し出した。
「俺的には、直人のデビュー曲かなりイィ線いくと思うよ」
……デビュー曲。
明日コンサートラストのアンコールで歌う、
17日発売予定の俺の初ソロ。
「そうですか、けどまだ分かりませんよ?」
自分的には良い曲だと思うんだけど……
っていうか、それくらい思ってないと歌なんて歌えないんだけど?
世間的にイイ線いってるかどうかは、ファン含め世間の人が決める事だからさ。
俺が軽く流すと。
「直人初の作詞も、男の俺でもなかなかグッときたしな。
っていうか……
……お前、好きな奴でもいるのか?」
――っ!?
「いや……全くいてないですけど」
渡さんの問い掛けに、
とっさに平然を装った。
はー……びびった。
渡さん、急に話し振ってくるからさ……
一瞬だけ、バレたかと思った。
っつうかさ……
んな事でビビるとか……
情けねぇよな、俺……
こんなんじゃ、
マジで情けない。
俺の心情なんて分かるはずもない渡さんは、
ペラペラと話し続ける。