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あの、音遠と気持ちが通じ合った日から。




俺は……


自分と葛藤していた。




想い合うだけでも


幸せで幸せで
仕方がないハズなのに


それだけで、充分すぎるくらいに
幸せなハズなのに。




……それ以上を
求めてしまいそうな

卑しい自分が……





……たまらなく、
嫌だった。





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9月終わりの、長雨。



降り止まない雨は、

まるであの日の
音遠の涙みたいだ。



だから……



雨は……嫌いだ。





──あの日から家を出た俺は、

毎日渡さんの用意してくれるホテルで過ごしていた。



今日も遅くまで仕事があって、

クタクタになりながらホテルに帰ってきた俺の部屋の前に。





「よっ、一週間ぶりだな!直人!」



「……豊」




──満面の笑みで笑った、豊が立っていた。




豊は……


俺と音遠の事を知ってる、唯一の人間だ。


っつーかまぁ、

俺が昔からたまに弱音やらを色々聞いてもらってたんだけどな……?




とりあえず部屋に入った俺達は、

冷蔵庫にあったビールで乾杯した。