「……バカ音遠?」




お兄ちゃんは
優しく私を呼ぶと――





「いひゃいっ!やめてよっ!」




――私のほっぺを、
いつものように両端から引っ張った。



あーもー……

ホントにガキだ。




「ははっ」



イタズラっぽく笑うお兄ちゃんは、

本当にカッコ良くて。


思わず見とれちゃいそうだけど……



なんだかそれは負けた気がして、

私は思いっきり睨み付けた。






――ただ純粋に、

この穏やかな時間が
幸せだと感じたの。



私とお兄ちゃんが、


お互いの気持ちを誰にも話さなければ……

隠し通せれば……




こうしてこのまま、

この幸せが続いていくんだろうな……


って、そう思ったの。




けどね?



だけど……





兄妹で恋愛なんて、
この世の規律に違反してる。




そんな簡単に……


……幸せになれるワケ、
無かったんだ……






──そうして約一週間。



お兄ちゃんの仕事はやっぱり毎日忙しくて……


朝と深夜しかなかなか顔を合わせる事は無いけれど。





それでも私達は、



気持ちが同じってことが、


とてもとても幸せだった。





―――――
――――