――まずい。
瞬時にそう思ったけど、
時既に遅し。
「あっ、音遠のお兄さん
おかえりなさいっ!」
少し興奮気味に言う澪の声が、リビングに響いた。
「へ?あー……と、
確か……校門にいた音遠の友達だっけ?」
お兄ちゃんはというと、
リビングにいた澪の存在に少し驚きながらも
被っていた帽子を脱ぎ
髪の毛をグシャグシャにかきあげた後……
澪に向かって、『ナオト』みたいに微笑んだ。
「はいっ、音遠と仲良くさせて頂いてる、澪と言います!」
あー……
澪の顔、満面の笑みでしかも真っ赤だ。
テンションも激高だ。
ほら。
…………やっぱり、
結局はお兄ちゃん目当てだったんじゃん。
その時の澪の幸せそうな表情を見て――
ズキン
――胸が、痛くなった。
「澪チャン、ねぇ……
っつか音遠、お前もう起きても大丈夫なんか?」
澪の方をチラリと見たと思ったら、
お兄ちゃんはスタスタと私のそばまでやってきて
おでこに触れようとした。
