ゆっくりと店内を見回すと、主の態度はともかく、趣味だけはいいのか、ところどころにセンスの良さが感じられた。
品のいい調度品に、装飾は最小限をさりげなく。カウンタには白い生花を入れた小瓶が置かれ、カクテルに使うのか、旬のフルーツを色鮮やかに盛りつけたガラスの器もあった。
そして独特の甘い香り。
照明を落とし、BGMも流さないのに、緊張させない穏やかな沈黙が、逆に気持ちを安らがせた。
建生は視線をバーテンダーに戻した。相変わらず無表情で備品を磨いている。
さっきも感じたが、どうも妙な気分にさせてくれる男だ。白い肌、鼻筋の通った端正な顔立ち。
