「あのーすいません、タオルとかないの」
「……」

バーテンダーはちらりと目線だけあげてきた。目が合った一太郎は、無意識に身体を震え上がらせていた。
…なんつー目つきをする男だ。

「随分と厚かましいんだな」

バーテンダーの記念すべく第一声。淡く響くテノールは、しかし内容が内容なだけに、聞き惚れるわけにはいかなかった。

「あ、厚かましいって、タオルくらいいいじゃねえか」

喧嘩腰の一太郎に、黙れとばかりに白いタオルが投げつけられた。
きちんと手渡ししやがれと、瞬時に頭に血が上ったが、相手の落ち着き払った態度を見ていると、それもバカらしくなってきた。

こういう店なのだろう、だから客も入っていない。