器用に動く細い指をぼんやり見つめていると、手を止めたバーテンダーは、うんざりしたように口を開いた。
「私はさほど暇ではないんだが」
客もいないのによく言う。
「こちらから言わなければいけないのか?…ご注文は」
「……」
建生はあんぐりと口を開けてしまった。あきれた。怒りを通りこして呆れてしまった。
なんなんだこの横柄なバーテンダーは。
「ご注文、ね…」
俺、こういう店初めてなんだけどねと思いつつ、カウンタに視線を走らせる。
「で、メニューは?」
「…なぜ」
「なぜ?」
バーテンダーは驚いているようだが、驚きたいのはこっちの方だ。
