歯無は必ず、食堂に来たときは知り合いがいないか確認する。声を出すのをやめたが、テーブルをひとつひとつ周り、確認することにした。

 誰も歯無の行動を訝しく者はいない。ただ、語野字だけは避けたいのだ。無意味な話につき合わさられるのは精神的に疲労するからだ。

 今、ここに語野字らしき男はいない。

 歯無は皿にご飯とシュウマイを乗せて、テーブルで食事をしている男を丹念に観察した。
 知っている男は誰もいなかった。

 歯無はあきらめ、食事をするために座った。誰もいない席に一人である。