「そんな慌てて、食べるからだよ」

 角刈りの男は言った。

 詰まっていたノドがすっきりした歯無は角刈りの男を黙って観察した。

「おいおい、そんなに見つめるなよ。気持ちが悪いだろう」

「すいません……」

「まあ、素直に謝ったから許してやろう。俺は語野字兵石(ごのじへいせき)と、申す。年は四十二才だ!」

「歯無左斗史と言います。年齢は三十三才です」

「そうか。歯無くんだな」

 語野字は首を縦に一回振り、おちょくったようにほっぺをふくらました。