壁が左右にゆっくりと動いた。

 歯無はあまりの光景に言葉が出なかったのだ。

 広さは百畳ほどで、手前は丸テーブルが並んでいて、奥には色々な料理が置かれている。

 もちろん、男たちがテーブルで料理を食い散らかしている。会話をしている者もいるが、ほとんどの者が料理に夢中である。

 歯無の体も正直で、誰に言われるわけでもないのに、料理の前に走り出していた。

 色とりどりの料理が皿の上で並んでいる。

 歯無は視覚と嗅覚を刺激され、お腹の虫はなりっぱなしだ。

 どれから食べるか迷うほどである。

 歯無は取り皿を持って、見回した。