歯無はタクシーの運転手に揺さぶられて目を覚ました。

「お客さん、着いたよ!」

 タクシーの運転手の声はトゲトゲしかった。

 歯無はすぐに料金の表示に目が向いた。かなり高額だった。

「ちょっと、待って下さい。お金を取ってきます」

 歯無は大急ぎで自宅に戻った。と、言っても走ったわけではない。気持ちだけである。

 ドアは鍵がかかっていないので、泥棒の心配はあった。部屋に入ると、記憶の中の光景と変わりなく、金品もあったので安堵した。

 タクシー代が高額だったので、クレジットカードを持って精算した。

 再び、歯無が自宅に戻ると、玄関のドアの前に隣の女性がいた。中をうかがっているようだ。