いきなり目が覚めた。歯無の目に映る光景は殺風景だった。

 コンクリートの灰色が何を意味しているか理解出来なかった。

 だが、すぐにつらい思いが脳裏に浮かんだ。

 夢ならば幸せだ。

 現実は囚われの身だ。

 理由は拉致するロボットを見てしまった罪だ。

 歯無は三十年生きているが、理解不能な罪で、逃走していた。

目覚めは悪かった。

 だから、脱出を目指して、天井から伸びているはしごを上るしかないのだ。

 歯無は足腰が痛むのを我慢して、はしごを上った。