歯無は目が覚めた。

 鉄格子が見える。
振り返ると、灰色の壁に洋式のトイレが一つあるだけで、窓はない。

 電灯も薄暗く、鉄格子の前は壁があるだけだ。

 さらに、この部屋を観察すると、十畳間ほどの大きさだろうが、物が何もない。それに臭い。

 この悪臭の元を探ると、便器だ。

真っ黒に汚れ、掃除はやっていないように思えた。

 歯無はこの室内に何もないと思ったが、フランスパンと水の入ったペットボトルが無造作に置いてあった。吐き気がした。こんな悪劣な環境で食事など出来ない。

 ここはどこだ?

「おーい!」