歯無が事務所を出たとたんに、罵声が聞こえたのだ。緊迫感ですぐに誰が出しているのか検討がついた。

 戸度橋だ。

 歯無は急いで向かった。

「わからんか? お前には一生理解出来んぞ!」

 歯無が争いの現場に着くと、戸度橋とベテランアルバイトのおじさんがにらみ合っていた。

 他の人は傍観者で、仲裁に入る気配さえない。

 険悪な雰囲気が戸度橋とおじさんの間に火花が飛び散っている。

 おじさんは右手を握りしめ、腕を水平に戸度橋の顔面をめがけた。