「はい」

 戸度橋は深くお辞儀をし、顔を上げるまでに時間を要した。

 歯無は戸度橋を見送ることにした。

 部屋を出って、左はすぐ出口だ。思えば『EXIt』も『レベル1』から『レベル3』に上がるにつれ、表記が立派になったものだと、歯無は思った。『レベル1』では壁に文字が書いてあるだけだったのに、『レベル3』では看板になっているのだ。

 やはり『レベル1』に戻りたくはない。

 歯無は戸度橋に手を振りながら、ここに骨を埋めてもいいとさえ思った。

 それだけ、脱出が不可能だからだ。

 戸度橋がいなくなると、歯無は今度こそ寝ようと、思った。