数人の男女に出会ったが、知らない顔なので、言葉を交わすことはなかった。

 女は二十代後半で男も同じ位だろう。『レベル3』では女もいるのだ。久しぶりに見たので、興奮したし、語野字の言っていたことを思い出した。

 天国。

 そうかもしれない。

 歯無は部屋を数えていたことをすっかり忘れていた。だいたい百室だろうと、推測した。

 そんなことはどうでもよくなった。

 長い廊下の端に着いた。矢印で示してある。左に行けば、『病院』右に行けば『食堂』となっている。

 歯無は右に向かった。壁しかなく、ぎょっとした。