「坂本くん、君はこのご時世にまだおなごにウツツを抜かしておったんか」
「ちょっと待ってつかあさい、桂さん。加尾の顔みてください。もうわしゃあの笑顔がたまらんき」
「坂本くん、きみは何を言うてるか分かってるのかい。そんな話を君の口からは聞きたくなかったな、僕は」
「もうどうしてあの加尾の顔をもっと見てくれんがじゃ。おんしら加尾のはにかんだような微笑み知らんがいかんがぜよ」
「あのね坂本くん、僕はたしかに加尾さんという娘を知らん。けんど、今の君は恋に落ちて盲目になってると思うな、僕は」
「もうどうしてあの天使の微笑みをそんな軽く扱うがぜよ!これだけは譲れんぜよ」
小五郎は今の龍馬には何を言っても無駄だと感じ、やれやれと言いながら去っていった。